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アマガミ:プレイ雑記その7/橘純一

その朝焼けが、眩しすぎて
■09年06月17日
さぁ、ラスト考察は変態紳士と呼ばれる、愛すべきヘタレ主人公「橘純一」!
でも本当にそれだけでいいの?裡沙ルートで見せた、歪んだ恋愛に最高の答えをプレイヤーに見せた彼を、
そんなちっちゃい器で測れない!!うおお、オレはやるぜ!見ててよ、橘さん!
ネタバレもいよいよもってリミット限界!最後までやる予定の人は絶対に見ないで!!
やらない予定の人は、見て、もっかいやって!

■壁紙1280×1024
こちらが完全版。↑のはネタバレ防止用にトリミングしてありまーす。
わかる人だけわかる、原点の絵なんで、なんとデフォルトヒロインがいない!w


Web拍手を送る?

[DJK]はもっと歌詞が電波でもよかったのにw
ドリームクラブのパーソナリティーがなんとみずはっち!
やべー、ゲストであみすけ着たら、アップ再来だよ!超嬉しいw

さぁ、感想いってみよう!
■橘純一解体新書その1
いわずと知れたアマガミの主人公であり、公式お墨付きの変態紳士。
その思考と妄想は無秩序かつ無限大。斜め下方向に思考が常に炸裂し続ける逸材だ。
ギャルゲー史上最強のマゾヒズムと言っても差し支えがないだろう。

そんな彼だが、以外に周りの人間からの信頼は厚い。
友人が危うく思う程のお人よしであり、その2枚目の風貌からは想像が付かないほどの
人当たりの良さと、小心者が持つ自己評価の低さ。そして謙虚さ。
様々な要素を含んだ橘純一は「まぁ、橘くんなら許しちゃうか…」という曖昧なステータスを持つ。
最もこれは、彼と深く付き合いのある友人からの評価であり彼の内面を知らない女子には、
ただの優柔不断の優男としての評価しかない。いわゆる顔だけ男だ。
さらにいうならその「許してしまいがちな存在」というのは一部の男性からは許しがたい存在でもある。
このように、恋愛シミュレーションというジャンルにおいて彼は一際異彩な存在だ。
彼を自分の分身のようにシンクロしてゲームを遊ぶのは無理があるのではないか。

ならプレイヤーはどのように橘純一と付き合っていけばいいのだろう。
このゲームがノベルゲーなら問題がない。シナリオが優先されるノベル形式においては
主人公の性格こそが物語の面白さに繋がる。だからこそ主人公は個性を持たなければならない。
サウンドノベルとは、もともと小説に音楽と映像で臨場感を持たせ、
古き良き時代の産物ゲームブックのような選択肢を増やした、視覚系小説なのだから。

だが、恋愛シミュレーションはそうではない。主人公はプレイヤーである。
限定された時間と空間で、いかに心地よい時間を過ごすか。
ヒロインや友人達との楽しい思い出、切ない出来事。そんなことを”体感”することが目的だ。
橘純一は、その点において恋愛シミュレーションゲームの主人公としては失格とせざる得ない。
彼の行動や選択は、プレイヤーの意思と無関係に働く事が多すぎるのだ。

例えば、中多紗江のルートでの橘純一は、多くのプレイヤーに「なんて女々しいヤツだ!」と
思わせるのに十分なほどの優柔不断ぶりを見せる。イライラしたプレイヤーは多いのではないか。
絢辻詞に罵られつつも、なんだか喜んでしまう純一。はるかさんに犬扱いされて尻尾を振る橘純一。
確かに見ていて楽しいが、アマガミプレイヤー全てがマゾでも変態なわけでもない。
これは純一の持って生まれた自虐的なステータスだ。(この時点でものすごく特殊な人間性だが)
それを自分と同じ感覚で楽しめる人もいれば、第3者の視点で小説を読むように彼を眺めることもできる。
このように彼はプレイヤーの手の届かない所で、自分の個性をバラ撒いてしまう暴れ馬だ。

そんな「僕は僕だ!」という自己主張の激しい彼だが、何故か共感してしまう部分がある。
それこそ恋愛シミュレーションとノベルゲーム、両方の顔を併せ持つアマガミの
ハイブリッドシステムに彼が対応している結果に繋がるわけだ。



■橘純一解体新書その2
「プレイヤー=橘純一」ではないと、考察その1で述べたように彼は一人のキャラクターだ。
しかしアマガミはキミキスのように「○○はオレの嫁!」などと言った、自分視点によるヒロイン萌えも出来る。
恋愛ノベルゲーにおいて、オレの嫁宣言は本来成り立たない。
ヒロインは、主人公と結ばれてこそ最も幸せになることができるからだ。
ならば、ノベルゲーのような個性を持った主人公橘純一には、何故それが起こり得ないのか。
それは、彼がヒロインごとに様々な性格へと変化する一貫性のないキャラクターであり
自分の性格に最もフィットしたルートの橘純一を、自分だと思い込むことができるからではないだろうか?

物語の主人公とういうのは、一つの人格のもと形成されるその世界の柱だ。
その柱のおかげで、世界という建築物ができていく。
結果、その世界への理解を深めていくこともできる。
恋愛シミュレーションの主人公というのは、誰もが安心できる形状の柱であるべきだ。
その世界を好きになるためには当然といえよう。

ところが、よくよく考えたら、それは一つの物語においてへの安心感だ。
柱が一本しかないならば、もう別の世界を建築する事は出来ないという閉鎖感にも繋がる。
そんな閉鎖された空間で、その柱が自分とは似ても似つかない人格を元に作られていたらどうだろう?

並行世界。自分がこのアマガミのレビューで散々使ってきた言葉である。
ある一点を軸に分岐していく世界。アマガミの世界は並行世界の塊だと自分は思っている。
それは、ソエンルートやBADルートであり、二度と戻れない、ここではないどこかへ繋がっている。

そんな世界に存在する各ヒロインの未来。
人を信じることを止めた詞、幼馴染を待ち続ける梨穂子、そして泥にまみれながらも進むはるか。
彼女らの存在を知れば、橘純一だけが一環した性格であり続けるのもおかしな話になる。
彼も環境に合わせ、多様性のある性格の変化していくのは当然ではないだろうか。

並行世界の物語でよく使われるが、別世界の自分が全く違う悪人になっていたりすることがある。
世界が違うのだから生き方が違うのも当然だ。そして世界というのは、自分の周りの環境である。
環境によって人が変わるのならば、橘純一がヒロインごとに別の成長をすることに違和感がなくなる。

そこで先ほどいった、自分と最もシンクロする橘純一を見つけることが重要になる。
これにより安心した世界を構築し「○○はオレの嫁!」という結論に繋がるのではないか?
自分は、最も共感できた橘純一が梨穂子シナリオでの彼の性格だ。
それが「梨穂子はオレの嫁!」に繋がる。そして、他の橘純一は自分自身の可能性だ。

ノベルゲーと恋愛シミュレーションと両方の側面を持つ主人公の橘純一。
それは可能性の獣なのではないか?(ガンダムUCかよ)



■橘純一解体新書その3
それでは彼の立ち居地を明らかにしたことで、今度は彼を一人の固体として解体しよう。
彼がプレイヤーとシンクロしない部分が多すぎる事は、今までにも取り上げている。
その中でも一番の理由が「何故、森島はるかに憧れているか?」という事が挙げられるだろう。
[プレイ雑記その6]でこの考察は散々したが、もう一度とりあげておこう。
 
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ゲーム開始時、橘純一が森島はるかにどうして恋をしているのかを
彼はプレイヤーに伝えていない。そう、彼がプレイヤーを突き放しているのだ。
自分の心情を語らない主人公。これはとても重要なことだと思う。
彼が恋愛シュミレーションの主人公なら、本来は森島はるかに憧れている理由を
プレイヤーに伝え、プレイヤーと同調することが必須と言える。
(といっても、大抵その理由は単純な片思いであったり、憧れなわけだが)

だが、橘純一の彼女への想いはそういう誰もが入りやすい設定ではない。
プレイヤーの手の届かない、もっと深い場所にその想いの理由はある。
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この辺りの彼はノベルゲーの主人公的な性格を持っている。
物語を面白くするためにあえてプレイヤーに真実を隠しているという事だ。
そして、彼の本当の性格を知るためには、薪原美佳、上崎裡沙、そして橘美也が必須になってくる。

今回自分が描いた絵は、その名の通り、彼の人格構成が行われた中学3年生から
高校二年生の冬までの空白の期間における4人の立ち居地だ。
朝焼けに位置する美佳と美也、反する裡沙は未だ夜の闇の中。
橘純一は、その朝と夜の境界線に立つあやふやな存在だ。

この構図はアマガミの裏設定であり、プロローグだ。
各ヒロインだけを追いかけるだけでは到達できない。

真のアマガミルート、そして橘純一物語は、裡沙を振ることではじまるのだから。

そんなバックボーンを持つことで橘純一のゲーム開始直後から
各ヒロインへの接し方を理解できるようになる。逆にいうとこれを知らずにプレイしていた
最初の周回だけでは、橘純一の魅力は伝わらないだろう。

この裡沙や美也ルートというのは後付設定であるという。
だが、この橘純一が見ていた世界をひっくり返す、イブの真実は、
後付設定という枠を超えている。ライターやスタッフさえも知らなかった世界。
そんな世界のイメージがある。アマガミのキャラというのは、橘純一を含め
これまでの恋愛シミュレーションにはなかった、製作者の手の届かないところまで暴走する
そのキャラスペックにあると自分は思っている。

橘純一の物語が、この3人からはじまっているのならば、
やはり彼は一人の固体であり、プレイヤーの代弁者にはなり得ない。
だが、そここそがアマガミの最も愛すべき、橘さん観察ゲーとしての真骨頂だと思っている。

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*補足
余談になるが、上崎裡沙は名前にも意義がある唯一のキャラクターだ。

「裡」という文字には、裏という意味がある。また秘密裡などにも使われるように
暗躍するという言葉にも使われる。
「沙」という文字には流水のようなイメージが一般的ではあるが、
実は水の流れを変えるという意味もある。「裡」を前につけることで「沙」のイメージは
裏から流れを返てしまうと言う意味になっているのではないか。

さらに「上崎」はカミサキ、カミ裂き。
そう、アマガミを裂くために存在していると言う意味にも捉えられる。
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■橘純一解体新書その4
さて、彼とのシンクロだが、梨穂子ルートの純一が自分に一番近い思考なのだと先ほど述べた。
だがもし、イブの真実からの脱却を図るならば、自分は梨穂子ルートのような橘さんにはなれない。
勿論、はるかル−トのように壁に挑み続ける事もできないだろう。
やはり、女々しいといわれようが、きっと紗江ルートの橘純一と同じように悩むと思うのだ。

この軽い女性恐怖症というのは、裏で彼をモテないように仕向けている裡沙の暗躍もあるのだが
基本的に彼は、女性を幸せにできる人物だと自分の事を思っていない。
そう思う人間は以外といると思う。とくに相手のこと気にしすぎる世代、二十代後半辺りから
四十代へ足をつっこんでる人間などに、このタイプが多いのでないだろう。
この年代の人が作る、青春像には橘純一のような性格がピッタリくるような気もする。

「変態だが繊細。明るく振舞っているが中身はドロドロ。」

心当たりはないだろうか?
そんな似たところがあるようで、我々がブレーキを踏むカーブを最高速でぶっ飛ばし
谷底に落ちていくのが橘純一。そして何故か生存してしまうのが彼。

彼は別に我々プレイヤーに操られているわけではない。
物語の中、選択肢はいくつも存在するが、その内容も結構無茶なモノが多い。
彼の性格を知っていればどれを選んでもおかしくないものばかりなのだが、
プレイヤー的には「オレなら絶対こんな事言わない」といったものも多数ある。
このように、プレイヤーが選びにくい選択肢ばかりで埋め尽くされているとき
彼は「僕の選んだ選択肢はこの三つだけだ!」とプレイヤーに挑戦しているのだ。
ここでプレイヤーは彼が迷っている道の一つを示すために存在していることが分かってくる。
そこに、彼へ憧れる気持ちが生まれる。
こんなに似たところがあるのに、我々にはない忘れてしまった熱き想い。
彼はヒーローになれる行動力を持っているのだ。

橘純一はヘタレだ。それは本人も周りもわかっている。
だが、一人の人間を救う為に全てを投げ打つことができるか?
と言われれば、まず世間の目を気にするだろう。そういうものなのだ、人間というものは。
彼はそこをフルスロットルで駆け抜ける。後先を考えてない。
その気持ちが味わいたいなら制服のまま冬にプールへ飛び込んだりすると、
多少なりとも彼の気持ちが分かるかもしれない。

この辺りがファンタジーであり、今までシリーズを通して描かれてきた主人公と全く違うところだ。
彼はヘタレであり、我々の分身であり、ヒーローなのだ。

多様性を持つ主人公橘純一。
彼が、アマガミのような並行世界を扱った世界の主人公であることが、
このゲームをグッと奥深いものにしていると自分は考える。
雑記&イラスト -
2009.06.17 Wednesday :: - :: -