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アマガミ:プレイ雑記その2/絢辻詞

3週目&9週目!
■09年04月06日
へい!今回は最強ドS仮面優等生、絢辻詞の話だっぜぃ!!
あとにゃずいは彼女の事を詞様と呼んでるんだぜぃ?。どうでもいいか?どうでもいいな!
さてここで問題が発生しました!えまーじぇんしー!だんがー!(デンジャーなんて言わない)

コホン。

「プレイ雑記その1,5」で妙に真面目なレビューぶっこいたんですが、実はあれがまだ尾を引いてます。
というより、アマガミに対する自分の感想が最近は真面目なモノばっかり出てくるのです。
じゃ、もういっそ自分のプレイ雑記はシナリオ重視で言ったほうがいいんじゃね?って。
どうも自分はアマガミの闇の部分に魅入られちゃったようですな!…あー、困ったもんだ。
だから皆さんの望むような面白可笑しい感想は書けないかもしれないってわけですよ、明智くん。
「プレイ雑記その1」で梨穂子を描いてた時は全然こんな気持ちじゃなかったのになぁ…。
アマガミの笑える要素は、他のサイトでもかなり詳しくレビューされてるので、にゃずいはあくまで
シナリオから読み取ったテーマとキャラの心情など、ちょっと別方向からレビューしていきたいと思います。

それでもOKな方のみ、つづきを読むをどうぞ。クソ長いから注意ね!
「やっと見つけた。私の心の扉を開く鍵を」
■絢辻詞全ルート感想
絢辻詞はアマガミというゲームのメインヒロインだ。パッケージも飾っているので当たり前の話だが。
でもちょっと待って欲しい。メインヒロインでありながらも、詞は橘純一のヒロインではない。
彼女はゲーム的に最も重要な役割であるメインヒロインを獲得しているにも係わらずシナリオ面では
橘のトラウマに直結するシナリオを持っていない。そんな詞が何故メインヒロインなのか?
それはアマガミの持つテーマを彼女が全てもっているからではないだろうか。

「彼女がゲーム的なメインヒロインを飾っているのはどうしてだろう?」
それがスキエピローグとナカヨシエピローグを両方やった感想である。いや、あった。過去形だ。
詞が本当の意味でこのゲームのヒロインであることは「???」の存在で実証される。
そしてBADエンディングを見てこそ、彼女がヒロインであることを実感でるのだ。

まず絢辻詞だけは「人生をここから変える事が出来る」という位置に居る。順を追って説明しよう。
他のメインヒロインである五人は、あくまで自分の人生の延長線上に橘純一が加わるに過ぎない。
しかし詞のシナリオは橘の存在によって「今までの自分を切り捨てる」という意味合いを持っている。
これは中多紗江のように、「今までの自分を変えたい」という願望とは決定的に違う。
紗江はそれまでの自分を否定している。だからこそ変わろうと思った。これは「向上」だ。
詞の場合はどうか?彼女は今までの生き方を肯定している。変わる必要を自分自身が感じていないのだ。
そんな詞が別の生き方をしようと考えるのは「変化」だと思う。
だが、そんな簡単に自分の生き方を変えることができるのだろうか?
それが詞のシナリオのテーマだ。


■スキルート
ゲーム中にはわずか6週間しかない。その中で急激に変わろうとしたらどうなるか。
その答えがスキルートだ。痛みをともなう改革と言ってもいい。個人的にはスキルートはBADに近い。
この結末を迎えるならば彼女は自分の信じた道を歩き続けた方が幸せだったのかもしれないからだ。
視野が極端に狭いスキルートの詞は、自分自身が作り上げた閉じた世界に橘純一を引き込んだ。
スキルートの詞は橘という安らぎの場所を見つけたことにより、
根本的な問題である「世界に向き合う」と言う事を放棄してしまっている。
結果、橘純一と絢辻詞は世界から隔離されたと言ってもいい。
しかし、このスキルートは儚いシナリオを楽しむ為のものなのでこれでいいとも思うのだ。
ナカヨシルートに比べると名シーンが多いのはそのせいだろう。
とくにクリスマスイブ、誰もいない学校の廊下で二人きりのダンスは泣ける。
あれは詞が自分の世界に橘を連れ込んだという意味でも、とても切ないシーンだ。

彼女のエピローグは時間が進まない。イブの直後という設定で描かれる。
これは二人の未来に困難が待ち構えているという暗示だ。
幸せな未来を描くことができないからこそ、話はここで終焉を迎えているのだと思う。
ただ、それでも彼女は幸せだと言った。そう彼女は幸せだと言ったのだ。
それが彼女がメインヒロインである一つ目の理由である。

もう一つスキルートに隠された「???」を絡む詞の心情。
詞の愛されたいという心の奥に眠っていた欲求が爆発することだ。
それは、他人の評価など考えない彼女の視野だけで見た橘純一に対する信頼だ。
これが半端じゃない。これはもう橘に対する信頼というより、自分に対する自信だ。
橘を信じるという自信。詞がメインヒロインになっている理由の二つ目はこれだ。


■ナカヨシルート
つづいてもう一つのルート。
簡単には自分を変えれないことを知り、時間をかけて変わって行こうと決意するナカヨシルート。
こちらの詞は、6週間という短い期間に焦って自分と世界の溝を埋めようとはしない。
だからこそ彼女の視野は広く、今までの自分自身を冷静に見直すことが出来た。
詞の最もベストなEDはこれだろう。世界に向かってどう向き合うか。詞はここからそれを知ってくのだ。
ナカヨシルートのエピローグは10年後の世界を描いている。
家庭を持ち、子供も持った幸せな詞の笑顔は、彼女が世界を受け入れた証明に他ならない。
ED直前に詞は橘にこう言う。「心の扉を開けてくれる鍵を見つけた」と。
このルートの橘は、彼女の心の扉を開くことに成功した。
しかし、スキルートの橘はその扉の内側へ閉じ込められたのだ。
そのセリフは劇中では存在しない。だが実際自分は強くそう感じた。


■性格分析
理想の為に走り続ける詞は「自分がない」と言った。だが本当にそうだろうか?
詞にはちゃんと自分がある。それを彼女自身が気が付いていない。いや無意識に隠している。

まず私は幼少の頃より詞の置かれている立場に同情はしない。
親との折り合いが悪く、愛されない人間などいくらでもいるのだから。
にも係わらず、上手く生きていく方法を蹴り、過酷な生き様を選んだのは彼女自身だ。
詞はその過酷な環境に自分を置いた事で「自分を亡くした」と言った。亡くした?本当に?
それは嘘だ。彼女にあるのは「意地」と「臆病」。
自分を他人に認めてもらいたいという意地と、本当の自分を出した時に周りが自分にどう評価するかという恐れ。
彼女は自分を「隠している」に過ぎず、それを自分自身が気が付かないようにしているだけなのだ。

彼女は悲劇のヒロインを演じているに過ぎない。だからこそ脆い。
能力の低い者を見下し自分が絶対と考える詞。
自分が幸せになるという幻想の為に他人を道具として考える詞。
それは他人の心と接触しない詞にとって、悲劇のヒロインを演じるための防衛線だ。
だから彼女が人の心を未知数と決め拒絶しようとするのも当然と言える。

詞は一般的な不幸なヒロインとは全く違う。それは「選択した不幸」の道を歩いているからだ。
不幸を選択したことは簡単だ。彼女は脆く、他人に愛されていないとダメなのだ。
そのために自分を殺し優等生を演じた。世界が自分を愛してくれるようにと。
誰からも好かれる完璧な優等生の自分は人に愛されるようになった。
しかし偽りの詞に与えら得る愛はやはり偽りのものにすぎなかった。
そこで生まれたのが、他人を見下し自分を絶対とすることで精神を保つことだ。
自分を上位の存在であるという思い込みにより、彼女は愛に対する飢えを埋めようした。
だがさらにその奥には愛されたいという欲求が眠っており、それは消えることはなかった。
なんと面倒な人間だろう。なんと不器用な人間だろう。
そしてこの三面性こそ、詞がアマガミのメインヒロインである三つ目の理由だ。

アマガミというゲームは底が知れない。
エロや変態要素、数々面白パロディーなのでテーマを隠しているが、
中身は壮大になりすぎない程度に。思春期に誰もが抱える悩みを丁寧に描いている。
それを乗り越えることが出来ると提示しておきながら、いとも簡単に壊してしまう恐怖も内包している。
このアマガミのもつ三面性を現したキャラが詞であり、彼女をメインヒロインに押し上げているのではないだろうか。


■スキBAD
基本的にBADルートは橘という人間が圧倒的に悪い。
「???」の話題を読んだ人ならばわかるかもしれないが、ここでももう一度説明すると
アマガミは「他人からの悪意」のある世界だ。それは心無いセリフや行動で描かれるのだが
それすらプレイヤーが実行出来たらどうなるか?それがBADルートだ。
橘が2年前のクリマスイブに受けたトラウマ。その行為を今度はメインヒロイン相手に行うことが出来る。
完全な八つ当たりである。正直めちゃくちゃなシステムだ。通常のプレイヤーなら手を出したくないだろう。
多くのヒロインが橘に絶望、または悲しみにくれる。そして橘を許す寛大なヒロイン、
橘なしでは生きられないヒロインなど、それは多種に渡って展開される。

だが詞だけは違う。
彼女の後悔とは「本当の自分が愛されないモノ」だと知ることになってしまった事だ。
もっとも脆い彼女において、それだけは絶対阻止するべきことだったのに。
結果、詞は壊れてしまう。人にはそうは移らないだろう。
今までの「優等生・絢辻詞」はそこにしっかりと存在するのだから。
だが、人に愛されたい、世界に認められたい、と真に想った本当の彼女はもう居ない。
彼女は偽りの自分である優等生という姿に飲み込まれてしまったのだ。
最後に詞はそんな絶望の中橘にこう告げる。「あの子は幸せだった」と。
裏切られても「幸せだった」と言い切る。とてつもなく脆い彼女が見せる最後の強さ。
これがアマガミのメインヒロインの決定的な証拠だ。彼女は全ルートで「幸せ」だと言うのだ。


■最後に
絢辻詞というヒロインに至っては様々な考察が成されるだろう。
私が思う詞というヒロインと他人が見る詞はまた別人になるのかもしれない。
そう思うと彼女は三面性というカテゴリーに区別することも困難になるかもしれない。
ここまで重いテーマ性扱ったことは、今までのシリーズをプレイ済みの人間には驚嘆に値する。
もちろん詞のシナリオが完璧ではあるとは思わない。
むしろこのテーマ性が逆効果になっている部分もある。それは他のキャラとのバランスの悪さだ。
詞のシナリオだけが妙に濃いため、少し浮いてしまっている。
他のキャラのシナリオ味付けが薄味と言われがちだが、もともとTLS〜キミキスのテーマは
先ほどいった通り「中身は壮大になりすぎない程度に、思春期に誰もが抱える悩みを丁寧に描く」
だったはずだ。詞にはそういうもののリミッターが一切ない。
完全なシナリオ暴走を起こしている感がある。だからこそのメインヒロインなのかもしれないが。
どちらにしてもやりすぎた感は否めない。そしてやりすぎた割りには、詞の家族の話が淡白すぎる。
どうしてここまで詞が追い込まれたのかも描写不足だ。
姉の縁との問題ももう少し丁寧に描いて欲しかったなど、痒い部分に手が届いていない。
だが非ノベルゲーでここまでテーマ性をもった恋愛シミュレーションは初めてだろう。
やはりアマガミは他のゲームとは何かが違う。その課題を見事クリアした絢辻詞。
ゲームとしての表ヒロインは彼女で間違いない。


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2009.04.06 Monday :: - :: -