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アマガミ:プレイ雑記その1,5/???

■09年03月30日
8週目!
攻略キャラの順番に感想をしようと思ってたんですが、
あまりといえばあまりにショックな「???」な存在で前倒し感想。
今回はアマガミシナリオにおける根本的な話になります。

「???」の意味がわからない限りは

絶対に閲覧禁止の方向で宜しくお願いします><
「あたしが一番貴方を幸せにできる…はずなのに…」
■上崎裡沙
プレイ雑記は攻略キャラの順番に行こうと思っていたが、彼女の存在でぶっとんでしまった。
隠し要素をこんなネタバレ禁止時期に書いている事に一抹の不安も感じるが、この気持ちは今でしか書けないと思う。
だからあえてここで記しておく。気持ちと言うものは大事にしたいのだ。

それでは改めて。

アマガミ隠しキャラである「???」、上崎裡沙(かみざきりさ)の登場でこのゲームは完全にキミキスを越えた。
裡沙を隠しキャラに配置したスタッフの冒険心には脱帽する。正直アマガミを侮っていた。
その冒険は絢辻詞のような破天荒なキャラを表のヒロインにした事よりも大きいのかもしれない。
間違いなく裡沙はアマガミの裏ヒロインだ。しかも絢辻詞以上にその性格は歪んでいると来てるから驚く。

上崎裡沙という女の子は「2年前のクリスマスイブに起きた悲しい真実」を伝えるキャラだ。
その真実とは、橘が体験したイブの出来事よりもさらに上の出来事であり
橘自身も、ましてやプレイヤーでさえ知らなくてもいい事件である。
その事件は本当に些細な事。しかし人が心に傷を負い生きていくという意味では飛び切りの仕打ちである。

真実を知らずとも人は「悩み」を乗り越え成長出来るという事を、アマガミはデフォルトキャラの
シナリオを通してプレイヤーに告げている。だから裡沙の登場は蛇足なのでは?と思う人もいるかもしれない。
しかしその「悩み」は勘違いであり、その本当の意味を「自分以外の誰かが請け負っていた」としたら?
これを”受け入れる”事で橘純一という男の物語は本当に始まると思うのだ。
アマガミというわずか6週間の間に起こりうる様々なパラレルワールド。
この一つ一つの結末が未来に続いていくの可能性だ。それが全て楽しい事ばかりではないと
実際にプレイをした方ならわかるはず。人生において、自分は、貴方は、それとも彼女は今
本当にベストENDから始まったスタートを味わっているだろうか?
人は何かを乗り越える前に、受け入れる事が本当の始まりだと強く思わせてくれる。
それが上崎裡沙というキャラクターであり、アマガミの本当のテーマなのかもしれない。

前置きが長くなってしまったがここからが本題。
アマガミのシステムであるパラレルワールドの基になるのがソエンルートと涙イベントだ。
これは裡沙の為にあるシステムといってもいい。そしてアマガミが既存のギャルゲーの一歩先に到達した
新時代のゲームだと思わせてくれたシステムだと思う。蛇足かと思われたこの二つのシステムだが
それは裡沙を攻略することで全く違った斬新なシステムだと気付いたからだ。何故なら…

裡沙は全攻略キャラで唯一ソエンルートから始まりベストENDを迎えることが出来るキャラなのだ。

さらにこれまでTLS〜キミキスまでの全シリーズにおいて貫き通していた世界感を完全にアマガミは破壊した。
それは「他者からの悪意のない世界」という恋愛シミュレーションならではの心地よい世界を放棄したからだ。
悩みや別れによる悲しみは自分が克服していくものだ。それらは自分自身との戦いであり、一種の内面世界である。
他者によるある程度の干渉があるにせよ、それはどうしようもない事実であり妨害ではないのだ。
それがアマガミにはある。言ってみればアマガミというゲームは恋愛ゲームでありながら青春ゲームなのかもしれない。
各キャラのシナリオの中にも「悪意ある発言や行動」はかなり登場する。それが他者からの妨害による心の傷だ。
上崎裡沙ルートで明らかになるイブの真実には、アマガミ上「最高の悪意」が存在している。

結果から言うと、裡沙のせいで主人公は心に傷を負った。裡沙はこのアマガミの中で最も元凶になる女の子である。
橘がイブの日に待ち合わせをしていた蒔原美佳。彼女に待ち合わせ場所を変えて伝言したのは理沙なのだから。
美佳は待ち合わせ場所に来なかったのでなく、違う場所で待っていたのだ。
これによって橘は「好きな相手に裏切られた」という傷を負った。そう理沙のせいで全てが狂った。
だが真実は違う。裡沙のこの行動は善意だっだ。

蒔原美佳は橘純一との約束を…告白をどう思っていたのか?
どうでもいいと思っていたのである。
それどころか、橘を笑いものにしていたのだ。イブ当日も彼女は橘の告白をからかうべく、
友人と一緒に待ち合わせ場所で待っていた。そしてこの計画を知っていたのが裡沙である。

裡沙は橘の小学生時代の同級生だ。その頃から密かに橘を好きでいた彼女。
しかしその後、学校は一緒でもほとんど接点のなかった二人。彼女は最初からソエンルートなのだ。
告白する勇気を持てない裡沙が唯一出来ることは見守る事だけだった。
橘が自分によって幸せにならずとも、彼が誰かと幸せならそれでいいという願望。
そんな裡沙だからこそ見えてしまった橘に対する悪意。それが蒔原美佳だ。
だがその悪意を止めるだけの勇気も理沙にはなかった。それがイブの事件に繋がるのだ。
橘は自分が蒔原を止めない限りかならず傷つく。しかし止める勇気もない。裡沙は最高に臆病な女の子だったのだ。
でもそんな自分でも、橘の傷を少なくできないだろうか?
薪原裏切られるにしても、優しい彼を一番悲しませない方法。
そうして裡沙の取った行動が二人をすれ違いにさせる事であった。これがイブの真実だ。

橘のトラウマを作ったのは間違いなく裡沙だ。だが、そのトラウマを軽くしたのも裡沙だ。
これが裡沙の「代理で橘の悩みを請け負っていた」に繋がる。いくら善意の行動とはいえ理沙は嘘をついたからだ。
だが、この事件は彼女の性格を歪めてしまう。自分が行った行動により彼が傷ついた。
ならばもうこんな事はしたくない。橘が傷つくところも二度と見たくない。
そうやって思いつめた結果が橘が他の女の子に騙されるないように監視する事であった。
裡沙は一種のストーカーになってしまったのだ。

そしてここで登場するもう一人の監視人。それが妹である橘美也だ。
なんと美也は裡沙と幼馴染だったのだ。橘純一を見つめる裡沙、そしてそれを見届けようとする美也。
二人の監視人はお互い橘の幸せを考えていた。だがそれは全く違う方向性であった。

裡沙は「愛する人を守りぬくこと」。
美也は「大切な兄を信じること」。

結末はプレイした人ならわかっていると思う。納得できる人も居るだろうし、そうでない人も居るだろう。
だが橘の出した最高の答え「後悔して傷つくなら、それも自分で選びたい」は本当に素晴らしいものだと思う。
そして美也という妹は歴代シリーズの中で最も「兄想い」であり、優しい性格であったのかも描かれた。
アマガミには真の意味での美也ルートは存在しない。
だが、上崎裡沙ルートでの美也の気持ちがわかる。それだけで自分は大満足であった。

上崎裡沙はわずか1週間だけの存在である。それは幻のように儚い。
だが、自分にとっては彼女の存在はアマガミという世界の一本柱だ。
少なからずソエンルートから復帰した裡沙を見る事で、自分が悩んでる以上に他の誰かも悩み生きている。
自分が幸せになる一方で不幸せになる人もいれば、自分以上の幸福を手に入れる人もいる。
アマガミは、アニメ「キミキスpurerouge」で描かれた嘘くさいハッピーエンド。それに対する挑戦に感じた。
そして現実を突きつけられた感が強いからこそ、アマガミというゲームに無限の可能性も感じることができた。

アマガミは基本的にはラブコメだ。笑って楽しんで終わりでもいい。むしろそこで終わっておくべきなのかも。
だが、一度深い部分にハマり込むと抜け出せない世界が待っている。本当に面白い。

最後に上崎裡沙という不器用な女の子。彼女は自分にとって、アマガミの真ヒロインなのかもしれない。
そして表のヒロインは間違いなく絢辻詞だ。それはまた別のお話で。


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2009.03.30 Monday :: - :: -